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換価分割とは?メリットとデメリットを解説

相続人が複数いる場合、不動産などの共有管理が難しいものは「換価分割」を行います。

この記事では、換価分割が使用されるシーンや、メリットとデメリット、必要な手順について解説しています。

換価分割とは?

換価分割とは、不動産など分割が難しい遺産を売却し、その代金を相続人で分割する方法です。

遺産分割では、土地や建物などの物理的な財産が含まれる場合、物理的に分けることが難しいため、換価分割が行われることがあります。

仮に相続人が3名で、不動産の売却額が3000万円の場合、一人当たり1000万円受け取ることとなります。

換価分割のメリット

換価分割が相続人や被相続人に与えるメリットについて見ていきましょう。

公平な分配が可能

換価分割の最大のメリットは、相続人全員に対して公平な分配ができる点です。不動産そのものを分割する場合、物理的な面での問題や価値の差が生じることがありますが、現金であればそれらの問題を避けることができます。

遺産の管理負担が減る

不動産をそのままの状態で複数人で共有する場合、管理や運用が難しいこともあるでしょう。

換価分割では、不動産を売却して現金化させるので、管理の手間を省き、相続後の手続きがスムーズになります。

迅速な解決が期待できる

不動産の共有は、売却や賃貸に関して相続人同士の意見がまとまらない場合、トラブルになることも。

換価分割は不動産を一旦売却し、金銭で解決するため、相続問題の早期解決が可能です。

換価分割のデメリット

一方で、換価分割を行う前に知っておくべき注意点もあります。

売却までの時間とコスト

換価分割を行うためには、まずは不動産の売却が必要です。

売却がすぐに進まない場合、相続人間での遺産分割が長引く恐れがあります。

また、売却には不動産業者への手数料や税金などのコストがかかり、実際に手に入る金額は不動産の売却価格よりも低くなります。

相場による変動リスク

不動産の価値は市場の相場によって変動します。

そのため、売却時期によっては不利な価格での取引が発生するかもしれません。

反対に、不動産が予想以上に高く売れることもありますが、タイミング次第です。

思い入れのある不動産を手放す

相続財産には思い入れのある自宅などの不動産が含まれていることが多く、換価分割を選ぶと、そうした不動産を手放さなければならないことがあります。

家族にとって特別な思い出のある財産を売却することに対して、心理的な負担を感じる方も多くいます。

また、被相続人が不動産の売却を望まないケースも多くあります。

換価分割の利用が考えられるケース

換価分割はすべての相続において最適な方法というわけではなく、特定の状況下で有用な選択肢となります。

主に、以下のケースで換価分割が検討されます。

・物理的な分割が難しい資産がある

・商業用不動産の相続

・相続人全員が現物での相続を望まない

それぞれ詳しく解説します。

物理的な分割が難しい資産がある

換価分割は、相続する遺産が不動産のように現物のまま分けることが難しい場合に選択されます。

例えば、親の住む実家や管理する土地などの不動産は、現金のように簡単に分割することができません。

また、土地の面積が狭かったり、形が特殊だったりする場合は、分割自体が難しいこともあります。

そのため、土地を売却して現金化し、その金額を相続分に応じて分ける方が手間や管理も少なく済むため換価分割が行われます。

農商業用不動産の相続

農地や商業用不動産のように、現物分割が難しいだけでなく、分割することで価値が著しく下がる場合にも換価分割が適しています。

もし農地を細かく分筆すると、農業の生産効率が下がり、土地の価値が減少してしまう可能性があります。

同様に、商業用不動産も分割によって建ぺい率や容積率に影響を与える場合があるため、価値が減る恐れがあります。

不動産を売却してその代金を分割することで、相続人全員が公平に財産を受け取ることができます。

相続人全員が現物の相続を望まない

相続人の中に、誰も遺産となった不動産を所有したくない場合も、換価分割が効果的です。

例えば、相続した実家がすでに空き家になっている場合、相続人の誰もその家に住む予定がなければ、不動産を持ち続けることで固定資産税などの維持費がかかります。

全員が不動産の所有を望まないなら、売却して現金に換え、その金額を分けることが一番現実的な解決策となるでしょう。

換価分割の流れ

換価分割を行うための流れは以下の通りです。

また、相続人が複数いる場合、全員の同意を得られていることを前提として解説します。

相続登記を行う

換価分割を実行するためには、まず相続登記が必要です。

これは、被相続人の名義になっている不動産の所有権を相続人の名義に変更する手続きです。

不動産を売却する際には相続人へ名義変更をしておく必要があります。

また、相続人が多数いる場合、全員の名義にしてしまうと売却手続きが複雑になります。

そのため、売却の際は相続人の中から代表者を選び、その代表者へ名義を変更します。

代表者が不動産を売却し、売却代金を相続人全員で分配する方法が一般的です。

売却手続き

名義が代表相続人に変更された後、その代表相続人が不動産を売却します。

不動産会社に相談し、売却対象の物件の査定を行い、適正な価格を算出します。

その後、査定結果を基に、相続人間で売却価格や販売方法についての合意をとります。

また、不動産の売却には、大きく分けて「仲介」と「買取」の2つの手段があります。

仲介では、不動産会社が売却物件を市場に出し、一般の買主を探す方法です。

相場に近い価格で売却できる可能性がありますが、売れるまでに時間がかかることもあります。

一方、買取では、不動産会社自体が直接買い取る方法です。

売却までのスピードが速いのが特徴ですが、仲介に比べると売却価格は低くなりがちです。

また、前提として不動産のローンが完済されていなければ売却はできません。

ただ、ほとんどのケースでは被相続人が団体信用生命保険に加入しているため、相続人に住宅ローンは引き継がれません。

売却代金の分配

売却後は、相続人で売却代金の分配を行います。

また、この際に遺産分割協議書に基づいて相続人全員に分配します。

遺産分割協議書は、贈与税を避け相続として売却額を受けとるための手続きです。

譲渡所得税の処理

不動産の売却によって得た利益には譲渡所得税が課税される場合があります。

譲渡益が発生した場合には税金がかかりますが、特別控除などを活用して節税ができる場合もあります。

まとめ

以上が、換価分割を行うための条件や手順となります。

換価分割を行うことで、複数の相続人に公平な分配が可能となり、スムーズな相続を実現できるでしょう。

ただし前提として、換価分割を行うためには、不動産を売る必要があります。

しかし、不動産の状態や条件が悪ければ長い期間売れない可能性もあり、その間も固定資産税などの税金や管理費が必要です。

不動産を手放すための手続きには様々な方法があるので、不動産会社と再度相談するか仲介業者を変えてみることも手段の一つです。