離婚で任意売却をする際は離婚前?メリット・デメリットや注意点を解説
離婚にともなう不動産の処分方法として、任意売却が選択肢として挙がることがあります。
しかし、離婚手続きとのタイミングや注意点を理解しておかなければ、思わぬトラブルが生じることもあります。
この記事では、離婚を伴う任意売却の重要なポイントや任意売却のメリット、デメリットについて解説します。
任意売却とは
任意売却とは、住宅ローン・借入金などの支払いが困難になったとき、債務者(所有者)と債権者の間に仲介者(任意売却専門業者等)が入り、不動産を競売にかけずに(競売で落札される前に)所有者・債権者・買主の納得のいく価格で売却を成立させることです。
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離婚時に持ち家はどうなる?
これまで共同生活を送ってきた夫婦が離婚する際、夫婦の共有財産の扱いについてどうすべきか考えることもあるでしょう。
離婚する際の持ち家の扱いについては「財産分与」について知っておく必要があります。
財産分与と持ち家
財産分与とは、夫婦の間で共有している財産や資産を公平に分割する手続きです。この手続きは、夫婦間の合意や家庭裁判所の判断によって行われます。
財産分与の対象となるのは、夫婦が婚姻期間中に獲得した財産や資産です。これには、不動産、預金、株式や投資、車両、家財道具、貯蓄、年金などが含まれます。ただし、結婚前からどちらかが所有していたものは対象外となります。
財産分与を行う場合、一般的には持ち家を売却して売却益を夫婦で折半するという選択を取ることが多いです。
しかし、財産分与を行う際に注意しておきたいのは、負の財産も分割されるという点です。
結婚生活を送る中で共有した借金やローン残債は、夫婦共同の債務として見なされます。
住宅ローンの残債や教育ローン、クレジットカードの未払い、水道光熱費や賃貸料、車の購入ローンなどがこれに該当します。
離婚時にマイナスの財産があり、プラスの財産がマイナスの財産を上回っている場合は、通常、プラスの財産からマイナス分を差し引いた残りの金額が分割されます。
多くのケースでは、夫婦の負債がプラスの財産を上回っている場合任意売却は検討されます。
次章で詳しく解説します。
離婚時に任意売却を行うケース
任意売却は、離婚時に行う場合でも信用情報への影響があるので、可能であれば避けたい選択肢です。
しかし、特定の状況下では、任意売却が必要になります。
残債が支払えない
離婚により、夫婦で共有していた住宅ローンの返済が一人で負担できなくなる場合、任意売却は有効な手段です。
経済的な負担が増え、離婚後に残債が支払えない場合、任意売却を選択することでその後の生活を守ることにつながります。
連帯保証人をやめたい
夫婦で住宅ローンを組む場合、片方が債務者で他方が連帯保証人というケースがあります。
離婚後に、もし債務者がローンを返済できなくなった場合、連帯保証人が全額の責任を負うことになります。
しかし、任意売却を選択することで連帯保証人は後々のリスクを回避できます。
離婚にともなう任意売却のメリット
離婚にともない不動産の残債を返済できなくなるのであれば、任意売却にはいくつかメリットがあります。
競売に比べて高く売れやすい
離婚後に残債を返済できないケースかつ、任意売却で不動産を手放さなかった場合、持ち家は競売にかけられることになります。
競売では市場価格の6〜8割程度でしか物件が売却されないことが一般的で、競売にかかってしまうと残債が大きくなりその後の生活に多大な影響を与えます。
しかし、任意売却の場合は通常の売却と同じように扱われます。
競売に比べて高く売れるので、残債を減らすことにつながります。
周囲に知られず売却できる
もし持ち家が競売にかけられたら、競売物件情報サイトで個人情報が公になります。
そのため、身近な人たちに夫婦の経済状況の悪化や離婚が知られてしまうこともあります。
しかし、任意売却の場合は一般的な売却と同様の手順で売却されるため、個人情報を守りながら持ち家を手放すことが可能です。
自己資金の持ち出しがない
競売の場合は不動産会社に支払う仲介手数料、立ち退きのための引越し代金など最初に経費を持ち出さなければいけません。
しかし、任意売却では、売却価格から諸経費を支払うことができるので、離婚の際に必要な引越し代などの持ち出しがありません。
また、任意売却では債権者となる金融機関との話し合いによって売却時期や分割返済の調整が可能です。
離婚にともなう任意売却のデメリット
離婚にともなって任意売却を選択する状況では、背に腹は変えられないといったケースがほとんどです。
しかし、デメリットについて理解しておくことで夫婦が納得してその後の生活を送りやすくなります。
連帯保証人からの同意が必要
任意売却を行う場合、連帯保証人からの同意が必要です。
夫婦で住宅ローンを組んでいた場合、片方が任意売却を行うためにはもう一方の同意が必要です。
連帯保証人である元パートナーとの連絡や交渉が必要となり、離婚の原因によっては心理的な負担が増えることも考えられます。
しかし、連帯保証人からの同意を得ることなく売却を進めることはできません。
個人の信用情報に傷がつく
一般的に、任意売却は住宅ローンを滞納してから行われます。
そのため、個人の信用情報に悪影響を及ぼし、離婚後の生活が苦しくなるケースもあります。
新たなクレジットカードの発行や金融機関からの融資が制限される可能性を考慮しておきましょう。
信用情報の回復には、5年から10年ほどの期間を必要とします。
債権者との交渉が手間
任意売却を行う際には、借入先の金融機関との交渉が必要です。
ローンが残っている不動産は、債務者は個人の判断で売却することができず、抵当権をもつ金融機関の承諾が必要です。
そのため、任意売却は不動産会社のサポートの元で行われます。ただし、任意売却は専門的な知識や金融機関との交渉が必要になるため、任意売却に対応可能な不動産会社に依頼する必要があります。
任意売却は離婚前に決める
夫婦で話し合い任意売却を決めたら、離婚まえに任意売却を行うことをおすすめします。
連絡が取りやすい
離婚後は、相手との連絡が取りにくくなる場合があります。
そのため、売却手続きに関する連絡や調整がスムーズに進まないことも考えられます。任意売却は一定の期間内に完了させる必要があり、時間との戦いになります。
離婚前に任意売却を行うことで、お互いの意思疎通が円滑に行え、手続きをスムーズに進めることができます。
共同の手続きが必要
夫婦での共同名義や連帯保証人など夫婦で住宅ローンを組んでいる場合は、任意売却の手続きを共同で行う必要があります。
離婚後に任意売却を進めると、離婚問題を解決した後も連絡を取り合わなくてはならない状況が続きます。
離婚の原因によっては、心理的な負担も大きくなるでしょう
したがって、離婚が確定する前に任意売却手続きを開始し、早めに売却を完了させることをおすすめします。
まとめ
任意売却に関する手続きや交渉は複雑で時間がかかるため、早めに金融機関や専門の不動産会社に相談することが大切です。
離婚が原因で残債が返せないことがわかったら、早めに行動を起こしましょう。