強制競売とは?通常競売との違いや流れ
強制競売とは、借金などの支払いを滞納した場合に裁判所の権限によって行われる売却手続きです。
通常競売と同じく債務返済のために行われるものですが、その違いは何でしょうか。この記事では通常競売との違いやその流れについて解説します。

強制競売とは?通常の競売との違い
「強制競売」が通常の競売と大きく異なる点は3つ挙げられます。
まず1つ目は競売の申立人です。
通常競売の申立人は不動産の担保権(抵当権)を持つ債権者ですが、強制競売の申立人は抵当権の保持に関わらず、債務名義を持つ債権者です。
2つ目は申し立ての根拠です。
通常競売は抵当権を根拠としますが、強制競売は債務名義が根拠とされます。
3つ目は競売の対象となる不動産です。
通常競売は抵当権が設定された不動産のみが対象です。しかし強制競売では、債務者が所有するすべての不動産が対象となり得ます。
強制競売は債務者の意思に関わらず強制的に不動産を売却する手続きであるため、「強制」という言葉が使われています。
通常の競売は債務者が自ら担保として提供した不動産を売却するのに対し、強制競売は債務者が担保として提供していない不動産や、債務者の意思に反して売却する必要がある場合に、債権者が裁判所に申し立てて行われる点が異なります。強制競売は債務者にとって非常に厳しい手続きであり、住む場所を失う可能性や、不動産が市場価格よりも安く売却されるリスクなどがあるのです。
強制競売の流れ
強制競売の基本的な流れは、通常の競売と大きく異なるものではありません。
ただし、申し立てが抵当権を持たない債権者によっても行われること、競売の対象が広範囲にわたりうることから結果的にその影響度合いは異なります。
- 債権者による申立て: 債務名義を持つ債権者が裁判所に強制競売の申立てを行います。
- 競売開始決定: 裁判所は申立てを受理すると、競売開始決定を下し、債務者に通知します。
- 不動産評価: 裁判所は不動産鑑定士に不動産の評価を依頼し、売却基準価格を決定します。
- 入札: 入札希望者は入札価格を提示します。
- 落札者決定: 最高価格を提示した入札者が落札者となります。
- 売却代金支払い: 落札者は売却代金を支払います。
- 債権者への配当: 売却代金から債権者に債務が返済され、競売が終了します。
強制競売を受けないためには
強制競売が発生する主な原因は、住宅ローンを含むローン・借金・税金などの滞納です。ではこれらの滞納を避けるためにはどうすればよいのでしょうか。
返済が滞りかねない場合の具体的な対応方法を以下に紹介します。
金融機関との交渉
住宅ローンなどの返済が難しい場合は、早めに金融機関に相談し返済計画の見直しやローンの借り換えを検討しましょう。金融機関によっては、返済期間の延長や返済額の減額などの提案をしてくれる場合があります。
任意売却
任意売却とは債務者の同意を得て不動産を市場価格で売却し、その売却代金を債務の返済に充てる方法です。競売よりも高く売れる可能性があり、残債務を減らすことも期待できます。不動産業者や弁護士などの専門家に相談して手続きを進めることをおすすめします。
自己破産
自己破産とは裁判所の認可を得てすべての債務を免除してもらう手続きです。借金などの債務が免除され(一部例外あり)、これにより競売による残債務の支払いを免れることができます。
しかし競売手続きが進行している場合は自己破産をしても競売を止めることは難しく、自己破産手続き中に競売が完了してしまうと不動産を失うことになります。
個人再生
個人再生とは、裁判所の認可を得て債務を大幅に減額し、分割で返済していく手続きです。住宅ローン特則という制度を利用すれば、住宅ローンは残したまま、他の債務を減額することができます。
強制競売通知が届いた後でも申し立てが可能で、とくに住宅ローンが原因で競売にかけられている場合は住宅ローン特則を利用することで現在の住宅を維持できる可能性があります。
ただし自己破産よりも手続きは煩雑で、厳しい条件を満たす必要があります。
もし強制競売通知が来たら
もし強制競売通知が届いてしまったらどうすればよいのでしょうか。
強制競売通知は法的な手続きの始まりで、放置すると事態は悪化する一方です。早急に手を打たなければなりません。
具体的な対応方法を下記に解説します。
1.状況の把握と整理
まず通知の内容をよく確認し、競売の原因となっている債務の種類・金額・債権者などを把握します。住宅ローンやそのほかの借金、税金など債務状況全体を把握し、どの債務が優先的に対応すべきか整理しましょう。
2.専門家への相談
つぎに今後の対応のため弁護士、司法書士、不動産業者などの専門家に相談します。
弁護士は法的な手続きや債務整理について、司法書士は登記手続きや裁判所への書類作成について、不動産業者は任意売却についてそれぞれ専門的な知識を持っています。
あなたの状況に合わせて具体的なアドバイスやサポートを受けられるよう、早めの相談をおすすめします。
3.金融機関との交渉
住宅ローンの滞納が原因の場合は金融機関に相談し、返済計画の見直しやローンの借り換えを検討しましょう。金融機関によっては、返済期間の延長や返済額の減額などの提案をしてくれる場合があります。
4.任意売却の検討
任意売却とは債務者の同意を得て不動産を市場価格で売却し、その売却代金を債務の返済に充てる方法です。競売よりも高く売れる可能性があり、残債務を減らすことも期待できます。
任意売却を検討する場合は不動産業者や弁護士などの専門家に相談して手続きを進めましょう。
5.債務整理の検討
任意売却が難しい場合や複数の債務を抱えている場合は、債務整理を検討しましょう。
個人再生や自己破産などの手続きは裁判所を通して行われます。弁護士などの専門家に相談して手続きを進めることをおすすめします。
6.引っ越し準備
どうしても競売が避けられない場合は強制競売に備えて引っ越しの準備を始めましょう。競売後は住居の立ち退きを求められることがありますので、早めに準備しておくことが大切です。
まとめ
強制競売は、住む場所を失うおそれがあるなど人生における大きな危機の一つです。もちろん税金やローンの滞納を避けて計画的な返済に努めることが一番ですが、予期せぬ状況・情勢によって苦しい状況に陥る可能性は否定できません。しかし諦めずに適切な対策を講じることで競売を回避できる可能性はあります。
返済が大きく滞りそうなときや強制競売が懸念される状況になったときは、早めに専門家に相談して事態の改善を図りましょう。