住宅ローンがきついときの対処法
マイホームの夢を叶えるための住宅ローン、その長期にわたる返済には様々な不安がつきものです。近年は経済状況の変化などによって住宅ローンの返済が厳しくなっている方も少なくありません。もし返済が滞りそうな場合は直ちに手を打つ必要があります。この記事では住宅ローンの返済に関する注意点と、いざというときのための対処法について解説します。

ローン返済がきつくなる理由
住宅ローンの返済は、当初の計画通りに進むとは限りません。生活していく上で様々な要因が重なり合い、または不測の事態が発生して返済が困難になってしまうことがあります。ここでは、住宅ローンの返済が滞ってしまう代表的な理由について詳しく見ていきましょう。
収入の減少
住宅ローンの返済が困難になる直接的な要因の一つが収入の減少です。転職や離職、そして予期せぬ解雇や会社の倒産は、収入が減って返済が滞る大きな要因です。会社の業績不振による給与減額やボーナスカットが起これば毎月の返済額がさらに重いものとなります。このように個人の事情だけでなく、社会全体の経済状況の変動も、住宅ローン返済に大きな影響を与えるのです。安定した返済のためには、収入の維持・向上に努めるとともに、将来の収入減少に備えた貯蓄をしておくことが重要となります。
支出の増加
収入が安定していても、支出の増加によりローン返済が滞るパターンも無視できません。子どもの成長にともなう教育費はとくに顕著で、進学に応じて学費や塾代などがかさみます。そして近年では食料品や日用品の値上がりが続くことによって、家計の負担は増大しつつあります。また変動金利型ローンの場合、金利上昇も返済額を増加させる要因となります。これらの支出増加に適切に対応するためには、日々の家計管理を徹底し、計画的な資産運用が不可欠です。
ライフプランの変化
人生の各段階における変化も、住宅ローンの返済に大きな影響を与えます。最も大きな変化の一つが定年退職による収入の減少です。現役時代のような安定した収入が見込めなくなり、退職金や年金のみで住宅ローン返済を継続する必要が生じます。また離婚も経済状況に大きな変化をもたらします。離婚時の取り決めによっては、一方の経済負担が増大し、単独での返済が困難になるケースも少なくありません。これらのライフプランの変化は、予測が難しい側面もありますが、ある程度は備えることが可能です。定年後の収入プランや、万が一の家族状況の変化に備えてまとまった貯蓄を準備しておくことが長期的なローン返済の安定に繋がります。
返済額の基準を知っておこう
住宅ローンを組む際に、金融機関の審査に通ることはもちろん重要です。しかしそれ以上に「無理なく返済を続けられる金額」を知っておくことが、将来的な返済の安定に繋がります。ここでは、返済額の基準となる考え方について解説します。
無理のない返済負担率
無理のない住宅ローンの返済額を判断する目安として「返済負担率」という指標が用いられます。これは年収に占める年間返済額の割合を示すもので、この割合が高すぎると、日々の生活が圧迫され、返済が困難になる可能性が高まります。一般的には返済負担率が20〜25%以内であれば、比較的無理なく返済を続けられると言われています。例えば年収500万円の方なら年間の返済額が100万円〜125万円以内、つまり毎月の返済額が約8.3万円〜約10.4万円以内であれば、過度な負担にならない可能性が高いでしょう。ただしこの返済負担率はあくまで目安であり、ご自身の経済状況をしっかりと把握し、無理のない返済計画を立てることが重要です。
返済額シミュレーションの活用
実際に住宅ローンを検討する際には金融機関のウェブサイトや住宅ローンシミュレーターなどを活用し、様々な条件で返済額を試算することも有効です。複数の金融機関のシミュレーターを利用したり、金利や返済期間の異なる複数のパターンを試したりすることで、将来的な返済をより具体的にイメージできます。
返済が苦しくなったときの対処法
住宅ローンの返済がどうしても苦しくなってしまった場合、できるだけ早く適切な対処を取ることが重要です。放置してしまうと状況は悪化の一途をたどる可能性があります。ここでは返済が困難になった際に検討すべき具体的な対処法について解説します。
返済条件の見直し
返済が困難になったと感じたら、ためらわずに住宅ローンを借りている金融機関に相談しましょう。 相談の結果、返済条件の見直しを検討できる場合もあります。これは毎月の返済額を減らしたり、一時的に返済を猶予してもらったりすることで、経済的な負担を軽減するものです。返済条件の見直しはあくまで一時的な支援策であり、根本的な経済状況の改善には繋がりません。しかし経済状況の再建のための時間を稼ぐという点では重要な役割を果たします。
借り換え
現在借りている住宅ローンよりも低い金利の住宅ローンに借り換えることで、毎月の返済額や総返済額を減らすことができる可能性があります。とくに変動金利型で金利が上昇している場合や、より条件の良い固定金利型ローンが見つかった場合などに有効な選択肢となります。借り換えを検討する際には、複数の金融機関の住宅ローンを比較検討することが重要です。金利だけでなく、手数料(事務手数料、保証料、抵当権設定費用など)なども考慮に入れましょう。借り換えによって得られる経済メリットが、これらの費用を上回るかどうかを慎重に評価する必要があります。
任意売却
住宅ローンの返済が困難になった場合の対処法の一つに「任意売却」があります。これは住宅ローンの滞納が続いた場合の措置として金融機関が担保である住宅を競売にかける前に、所有者の意思に基づき金融機関の同意を得て住宅を売却する方法です。競売と比較すると、所有者にとっては市場価格に近い価格で売れる可能性がある、プライバシーが守られやすいなどのメリットがあります。任意売却は競売を避けるための有効な手段の一つですが、債権者の同意や期限など、いくつかの条件があります。返済が困難になった場合は早期に金融機関や専門家へ相談し、自身の状況に合った最適な解決策を検討することが重要です。
返済が苦しくなった時の注意点
「ローン返済の負担が大きくなってきた」、「滞納してしまうかもしれない」、そういった場合には早急な対応が必要です。ローン返済が苦しくなった際の注意点を解説します。
返済が苦しくなったらやるべきこと
まずは金融機関への早急な相談をおすすめします。その際、現在の家計状況もまとめておくとスムーズに返済のためのアドバイスや解決策を検討できます。そのほかファイナンシャルプランナーや弁護士などへ相談することも有効です。決して一人で抱え込まず、精神的な負担もやわらげましょう。
ローン返済でやってはいけないこと
最も避けたいことのひとつに「問題の先送り」があります。もし誰にも相談せずに放置し滞納してしまった場合は、遅延損害金が発生し、最悪の場合として担保物件が競売にかけられる可能性があります。また他の金融機関からの借り入れで一時的にしのぐことは、状況をさらに悪化させる可能性があります。まずはローンを組んでいる金融機関への相談を行いましょう。
もし滞納してしまったら
住宅ローンの返済が滞った場合、まず金融機関からの連絡があります。正式な督促状の前に通知が来ることがほとんどなので、できる限りそれまでには対応しましょう。このまま滞納が続き、一括請求にも応じられないとなると、最後は強制的に住宅が競売にかけられてしまいます。この強制競売では公開情報となるほか、強制立ち退きが発生しかねない上、さらには市場価格よりも安い価格での売却となる可能性も高く、債務者に残る負担は多大です。最悪の場合でも強制競売を避けるためには任意売却が有効ですが、これも債権者(金融機関)の同意がなければできません。もし滞納が発生してしまった場合も、とにかく早急に金融機関と専門家に相談しましょう。
住宅ローンの返済は長期にわたるため、様々な要因で返済が困難になる可能性があります。借り入れの際には無理のない返済計画を立てることが重要ですが、万が一返済が苦しくなった場合は早めに金融機関に相談しましょう。適切な対処法を知っておくことで、状況の悪化を防ぎ、解決への道を探ることができます。