ローンがあるけど引っ越したいときの対処法
家を建てたが諸事情によって引っ越したい、転勤・家庭事情などでそういった状況が発生することは少なくありません。しかしその際、今の家はどうすればよいのでしょうか?基本的に住宅ローンが残っている状態で家を手放すことはできませんが、専門家に相談し賢く対処することでより良い対応方法を見つけることができます。いくつかの方法を紹介しますのでぜひ参考にしてください。

ローンが残っている場合の引っ越し方法
住宅ローンが残っている状態で引っ越しを検討する場合、まず考えられる選択肢があります。パターン別にその種類と注意点を見ていきましょう。
現在の家をそのまま保持する
家を離れる期間が決まっており、それが数か月から1〜2年程度であれば、現在の家をそのまま保持することも一般的な対応です。家の所有権を保持したまま将来的な選択肢を残したり、複雑な手続きが必要なかったりと一番簡単な方法ともいえるでしょう。ただし経済的負担とリスクには十分留意してください。住んでいなくても住宅ローンの支払いや固定資産税などを支払う義務は発生し続けます。また空き家の状態で長期間放置すると建物が劣化したり、害虫を発生させたりするうえ、犯罪に使われてしまうこともあり得ます。資金計画と防犯対策、そして定期的なメンテナンスを踏まえて慎重に検討しましょう。
現在の家を一時的に賃貸に出す
家を離れるのが数年間でも、期限の目途がついているならば賃貸に出して家賃収入を維持費用に充てることも選択肢のひとつです。まず重要な点として多くの住宅ローン契約では、無断で家を第三者に賃貸することを禁止しています。この場合は必ず金融機関に連絡し、一時的に賃貸に出したい旨を伝えて承諾を得る必要があります。そして承諾が得られればリロケーションの手続きを始めましょう。「リロケーション」とは家の持ち主が海外赴任、長期出張などで長期間自宅を離れる際に、その自宅を一定期間、第三者に賃貸すること、またはその管理業務を指します。入居者募集等はリロケーションを専門とする不動産会社に委託することもでき、各種対応を代行してもらえます。契約の際には委託費用や契約内容、とくに定期借家契約で契約期間満了後の再契約がないことを確認しましょう。
現在の家を売却する
現在の家に再び住む予定がない場合は家の売却も検討されるでしょう。現在の家の売却見込み額が住宅ローンの残債を上回るか、少なくとも同額程度である場合には、比較的容易に家を手放すことが可能です。売却によって得られる資金で経済的な負担が比較的少なく、手続きもスムーズに進めやすいというメリットがあります。自己資金を大きく持ち出す必要がなく、新たなローンを組むこともないため、将来的な返済の心配も軽減されます。精神的な負担も少なく、新しい生活へ気持ちを切り替えやすいでしょう。しかしながら売却によって利益が出た場合、譲渡所得税が発生する点に注意が必要です。
オーバーローンになるときの対処法
オーバーローンとは不動産の売却価格が住宅ローンの残債を下回っている状態のことで、これでは家を売却することはできません。それでも再度暮らすことがない家を手放したい場合、通常の売却とは異なる対応が必要になります。
自己資金
これは自己資金で売却価格の不足分を補填するという方法です。これは、家の売却見込み額が住宅ローンの残債を下回る差額をご自身の預貯金などの資金で用意し、売却と同時にローンを完済するものです。この方法の利点は、新たな借り入れが発生せず信用情報への影響もないため、スムーズに売却を進められることです。しかし不足額によってはまとまった自己資金が必要となります。
住み替えローン
「住み替えローン」とは新しい家を購入する際に、現在の住宅ローンの残債と新しい家の購入費用をまとめて借り入れるものです。自己資金が不足している場合でも引っ越しと買い替えを同時に進められる可能性がありますが、借入総額が増えるため毎月の返済負担が増加し、審査も厳しくなる傾向があること、金利が高めに設定される可能性があることなどに注意してください。
任意売却
「任意売却」は住宅ローンの返済が困難になった場合に、金融機関の同意を得て市場価格に近い価格で家を売却するものです。競売よりも高い価格で売却できる可能性があり、残債を減らせる可能性があります。しかし金融機関との交渉が必要となり、また必ずしも希望通りの価格で売却できるとは限らず、さらには信用情報に影響が出る可能性もあります。専門家のサポートも必要となるので任意売却を検討する場合には早めに相談しましょう。
ローンが残っている場合の引っ越しの注意点
住宅ローンが残っている状態で引っ越す際、注意しておきたいポイントを紹介します。
金融機関への相談
住宅ローンが残ったまま引っ越しを希望する際には、方法に関わらずまずは利用している金融機関に相談しましょう。売却、賃貸、住み替えローンなど、自身の状況に応じた適切なアドバイスや手続きについて説明を受けることができます。無断で行動を始めてしまうとローン契約に違反する可能性もあります。
離婚時の財産分与
離婚に伴う引っ越しの場合、結婚以降に買った家は夫婦の共有財産として扱われ、その価値やローンの残債も財産分与の対象となります。名義に関わらず財産分与の対象となる点に留意しましょう。公平な財産分与を行うためには家の市場価格やローンの残高を正確に把握し、夫婦間でどのように分担するかを明確に協議する必要があります。トラブルにもなりやすいので、必要に応じて弁護士などの専門家の助言を得ることも重要です。
ローン残債の確認
現在支払っている住宅ローンの残高を正確に把握することは、資金計画を立てる上で非常に重要です。家の売却を検討する際には、売却見込み額と比較して自己資金がどれくらい必要になるのか、あるいはオーバーローンになる可能性があるのかを判断する基礎となります。賃貸に出す場合でも、毎月のローン返済額を把握しておく必要があります。
不動産の市場価値
現在の家の適正な市場価格を知ることは、売却を検討する際に非常に重要です。複数の不動産会社に査定を依頼し、客観的な価格を把握することで、不当に安い価格で売却してしまうリスクを避けることができます。また売却期間を考慮した適切な価格設定も重要になります。
賃貸利用の注意
住宅ローンを利用している物件は第三者に賃貸することがローン契約で禁止されていることがあります。無断で賃貸に出した場合は、契約違反となり一括返済を求められるなどのペナルティが発生する可能性があります。賃貸に出す場合は必ず事前にローン契約書を確認し、金融機関に相談して賃貸の承諾を得る必要があります。
個人再生の検討
住宅ローンの返済を含めて多額の債務を抱えており、引っ越し後の生活が経済的に困難になる可能性がある場合、裁判所の関与のもとで債務を減額する個人再生という法的手続きを検討することも一つの選択肢です。弁護士などの専門家に相談し、自身の状況に適した手続きかどうかを検討する必要があります。
住宅ローン控除
住宅ローン控除は自分が居住している家に対して適用される税制上の優遇措置です。引っ越しによりその家に住まなくなる場合、原則として住宅ローン控除は受けられなくなります。ただし一時的な転勤など一定の条件を満たす場合は継続できる可能性もあるため、税務署や税理士に確認しましょう。
まとめ
住宅ローンが残っている状態で引っ越しを検討する際には、いくつかの重要な選択肢と注意点があります。まずはご自身の状況、引っ越したい理由、経済状況などを明確にすることが大切です。主な対処法としては、現在の家を売却する、賃貸に出す、またはそのまま保持するという選択肢があります。とくに売却希望でオーバーローンになる際は、自己補填や任意売却などの手段も検討されます。
いずれの選択肢を選ぶにしても住宅ローン残債の確認や金融機関への相談は非常に重要です。安易に引っ越しを進めるのではなく事前にしっかりと情報収集を行い、専門家に相談しながらご自身の状況に最適な方法を選択することが後々のトラブルを避けるための重要なポイントとなります。