自己破産時に任意売却は利用できるのか?メリット、デメリットを紹介
自己破産や任意売却はお互いに関係しあっており、どちらかを行うことでもう片方がともなうケースがあります。
この記事では、自己破産と任意売却の関係について解説し、もしどちらかを行うのであればどのようなタイミングで行うのがベストなのか、ということを解説します。
任意売却と自己破産とは
任意売却と自己破産は、どちらも債務問題を解決するための手続きですが、それぞれ内容も目的も異なります。
任意売却とは
任意売却は、住宅ローンの返済が困難になった場合に、債権者の同意を得て不動産を売却し、その売却代金をローン返済に充てる手続きです。
通常、ローン残債を売却金額でまかなえない場合、持ち主は自由に不動産を手放せません。
そこで、抵当権をもつ債権者(主に金融機関)の許可をとり、債権者の任意の下で売却するのが任意売却です。
競売にかける前に行われるため、売却価格を高く保ちやすく、買い手も見つかりやすいメリットがあります。
自己破産とは
自己破産は、借金の返済が困難な状況に陥った場合に、裁判所に申し立てを行い、債務の弁済を免除してもらう手続きです。
この手続きを行えば、負債をゼロにすることが可能になりますが、その際には所有する資産を処分する必要があるため、生活に大きな影響を及ぼすことが多いです。
任意売却と自己破産の違い
任意売却は、主に不動産の売却を通じて不動産ローンなどの債務を減らす方法であり、手放す不動産以外の資産を保持できる可能性があります。
一方、自己破産は、全体的な債務を整理する手続きであり、資産の処分が求められるため、生活に直接的な影響を及ぼします。
任意売却と自己破産のタイミング
任意売却と自己破産を行う場合、正しい順序で行わなければいけません。
結論からお伝えすると、原則任意売却は自己破産前に行います。
任意売却を先に行うべき理由
任意売却は、基本的に自己破産の申し立て前に行います。
不動産を所有したまま自己破産を申し立てると、「管財事件」となり、手続きが複雑になります。
また、裁判所に支払う予納金が必要になり、通常は40万円程度が必要とされます。
期間も1年ほどかかります。
反対に、自己破産時にすでに任意売却などで不動産を手放している場合は、「同時廃止」となり、手続きが簡略化され、費用も2〜3万円程度で済みます。
そのため、自己破産を検討していて不動産を所持している場合、同時廃止を行うための立ち回りが必要となります。
項目 | 管財事件 | 同時廃止 |
適用条件 | 破産者に一定の資産がある、もしくは不正の疑いがある | 破産者にめぼしい資産がない場合 |
破産管財人 | 裁判所が破産管財人を選任し、資産調査や配当を行う | 破産管財人は選任されない |
予納金 | 高額(40〜50万円程度) | 少額(2〜3万円程度) |
手続き期間 | 長い(6ヶ月〜1年以上) | 短い(3〜6ヶ月程度) |
資産調査 | 破産管財人が資産を調査し、必要に応じて処分する | 資産がないため、資産調査や処分は行われない |
債権者集会 | 開催される(債権者に報告し、意見を聞く) | 開催されない |
配当手続き | 債権者に資産を配分する手続きが行われる | 配当すべき財産がないため、手続きは不要 |
免責手続き | 手続きが終了してから免責許可が下りる | 比較的早く免責許可が下りる |
トピック:自己破産の申し立て中でも任意売却は可能
すでに自己破産の手続きを開始してしまった後でも、任意売却は可能です。
ただし、この場合でも不動産が処分される前でなければなりません。
任意売却のメリット
基本的に、不動産の処分は自己破産前に行いますが、その際に任意売却が行われるケースが多いです。
ここでは、任意売却を行うメリットについて解説します。
相場に近い金額で売却できる
任意売却では、市場価格に近い金額で不動産を売却できる可能性があります。
もし競売となった場合、買主が内部見学をできなかったり、物件の欠陥に対応しなければならないなどの不利な条件が多いため、基本的に相場の半分から7割程度で手放さなければならなくなってしまいます。
しかし、任意売却では一般的な不動産売却と同様の方法で売り出されるため、競売に比べて高い価格で売却可能です。
結果、住宅ローンの残債の負担も軽減されます。
持ち出しが不要
任意売却では、登記費用や仲介手数料などの諸費用を債権者との交渉次第で売却代金から支払うことができます。
自己資金を用意する必要がなく、金銭的な負担を減らすことができます。
また、交渉によっては引越し費用も売却代金から支払うことが可能です。
計画的に売却できる
任意売却は、売却を計画的に進められます。どの価格で売却するかや、いつまでに退去するかなど、ある程度自分の意思で調整できます。
一方、競売では手続きが完了すると強制的に退去しなければならず、時間的な余裕がありません。
プライバシー保護
競売にかけられた場合、物件の情報が公開され、住所や外観写真がインターネット上に掲載されますが、任意売却ではその心配はありません。
近所や親族に知られるリスクも少ないので、精神的な負担も軽減されます。
任意売却のデメリット
任意売却では、不動産の売却代金で住宅ローンの一部を返済しますが、売却額がローン残高に満たない場合、残債が債務として残る可能性が高いです。
この残債については、債権者との交渉次第では分割返済が認められる場合もありますが、完全に免除されるわけではないため、引き続き返済義務が生じます。
また、同時に新たな住居の家賃もかかるため、支出が大きくなるかもしれません。
また、債権者の同意が得られない場合は行えないので、任意売却の交渉に特化した専門の不動産会社に相談する必要があります。
自己破産のメリット
自己破産の最大のメリットは、免責が認められれば、ほとんどの債務が免除されることです。
クレジットカードの残高や消費者金融からの借り入れなどの債務を返済する義務がなくなるため、経済的に大きな負担を解消でき、再スタートを切ることが可能です。
また、任意売却の売却金額で支払いきれなかった住宅ローンの残債も免除されます。
ただし、すべての債務が免除されるわけではありません。
住民税や社会保険料、公共料金、養育費などの支払い義務は免責されず、これらは自己破産後も支払いが求められます。
自己破産のデメリット
自己破産をすると、所有していたほとんどの財産を手放すことになります。
マイホームや車、貴金属など価値のある財産はすべて処分されます。
法律では99万円以下の現金や20万円以下の個人資産のみが手元に残せるものの、資産を大幅に失うこととなるでしょう。
さらに、自己破産をすると信用情報に記録が残り、約7年間はローンの利用やクレジットカードの作成が困難になります。
自己破産した事実が周囲に知られる可能性もあり、社会的な信用の低下につながることもあります。
まとめ
不動産を所有している場合で自己破産を行うのであれば、まずは任意売却や通常の売却手順で不動産を手放した方が後々の手続きがスムーズです。
また、任意売却を行うことで経済事情が回復し自己破産を行わずに済むケースもあります。
そのため、まずは任意売却を検討すると良いでしょう。