任意売却にかかる税金と滞納しているケースについて
住宅ローンの支払いが難しくなった場合の現実的な選択肢の一つとして、任意売却があります。
しかし、税金を滞納している場合、この手続きが可能なのか疑問に思う方も多いのではないでしょうか。
この記事では、任意売却時にかかる税金や、滞納している場合でも手続きが可能かどうかについて詳しく解説します。
また、税金滞納時の注意点や成功させるポイントも紹介するので、ぜひ最後までお読みください。
任意売却にかかる税金とは?
任意売却は、住宅ローンの支払いが困難な際に金融機関の同意を得て行う不動産売却の一形態です。この場合、通常の不動産売却と同じようにいくつかの税金が発生します。
・印紙税
印紙税は、契約書や領収書などに課される税金です。不動産売買契約書に貼付する印紙がその納税手段となります。税額は契約金額に応じて変動し、数百万円~数千万円の契約では数千円~数万円の印紙税が必要です。契約金額が高額になるほど印紙税も増える点に注意が必要です。
・登録免許税
登録免許税は、不動産の所有権移転登記や抵当権抹消登記などにかかる税金です。任意売却では、新たな所有者名義への変更や抵当権抹消が必要となるため、必要となる税金です。たとえば、抵当権抹消登記では1件につき1,000円が課税されます。加えて、司法書士に支払う報酬も費用に含める必要があります。
・譲渡所得税
譲渡所得税は、不動産を売却した際に利益が生じた場合に発生します。売却価格から取得費や経費を差し引いた額が課税対象となり、短期保有(5年以下)の場合39.63%、長期保有(5年超)の場合20.315%の税率が適用されます。ただし、後述する特例や免除制度により課税されないケースもあり、任意売却においては課されないことがほとんどです。
・消費税
個人が自己居住用の不動産を売却する場合には基本的には消費税は課されません。しかし、不動産仲介手数料や司法書士報酬には消費税がかかるため、これらの費用も計算に入れておくようにしましょう。
任意売却で譲渡所得税が課されない理由
任意売却では、基本的に譲渡所得税がかからないケースがほとんどでしょう。それは、不動産の売却益が出にくいためです。
売却益が発生しにくい背景
任意売却を行うことで、金銭のやりとりは発生するものの売り手の利益はほとんど出ません。
売却価格は売却益を差し引いても住宅ローンが完済できない場合に利用されるため、結果的に利益(譲渡所得)が生じません。
そのため、譲渡所得税が課されない場合が多いのです。
税法上の特例
そのほか、以下のような特例では、住宅を手放す際の税負担が軽減されることがあります。
・居住用財産の3,000万円特別控除
マイホームを売却する際には、譲渡所得から最大3,000万円を控除できる特例が適用されます。この特例が適用されれば、譲渡所得が3,000万円以下の場合、譲渡所得税は発生しません。ただし、この特例を受けるためには一定の条件を満たす必要があります。
・強制換価等の特例
住宅ローン返済が困難で任意売却を行う場合、「強制換価等の特例」により譲渡所得税が免除される場合があります。この特例の適用可否はケースバイケースですが、任意売却では適用されやすいのが特徴です。
税金を滞納していても任意売却は可能?
結論からお話しして、税金を滞納している状況でも任意売却は可能です。
ただし、いくつかの注意点があります。
とくに、「差し押さえが」発生している場合には、その解除が必要です。
差し押さえ解除のための手続き
税金滞納が続くと、行政機関による不動産の「差し押さえ」が行われることがあります。
この状況下では任意売却を進めることができないため、差し押さえ解除の手続きが必須です。
解除を成功させるためには、以下の点を行政と交渉する必要があります。
・売却代金で滞納税を支払える見込みを示す
・経済的な再建計画を提示する
交渉の結果、行政が納得すれば、差し押さえを解除して任意売却が進められる可能性が高まります。
ただし、滞納の過程において役所からの通知を無視すると交渉が難航するため、必ず迅速に対応するようにしましょう。
税金を支払う姿勢をもつことが重要になります。
任意売却を成功させるポイント
任意売却では時間的な制約があるため、迅速な対応が求められます。なかでも「競売」にかけられることは避けたいので、以下のポイントに注意して進めましょう。
競売を避ける
任意売却が成立しなければ、不動産が競売にかけられることとなります。競売では市場価格より低い金額で売却されるうえ、退去時期の調整ができなかったり、プライバシーが守られなかったりとさまざまなデメリットがあります。
そのため、競売に至る前に任意売却を成立させることが大切です。
住宅ローンを滞納してから競売までの期間については以下の記事で詳しく解説しています。
適切な不動産会社を選ぶ
任意売却は特殊な不動産取引なので、法律や税金に関する知識が豊富な専門家の力が必要になります。
任意売却に特化した不動産会社を選ぶことで、金融機関や行政との交渉をスムーズに進めることができます。
こういった不動産会社を探すには、ホームページなどで実績があるか、任意売却に強いことをうたっているかなど確認します。
税金関係の連絡は迅速に
税金は仮に自己破産しても免除されません。差し押さえからの競売を防ぐためにも、税金を支払う意思があることを行政に伝えましょう。
連絡には迅速に対応し、手続きを進める意思が必要です。
まとめ
税金を滞納している場合でも、任意売却は可能です。
ただ、行政への対応には迅速かつ細心の注意を払う必要があるため、税金を支払う意思を示し差し押さえや競売を回避することが条件です。
任意売却を行う際には、案件に強い不動産会社を選択し、迅速に交渉を進めましょう。