共同担保の外し方と任意売却を活用するケース
住宅ローンを組む際、複数の不動産を担保に入れることがあります。これを共同担保といいます。しかし住宅ローンの返済が滞ってしまった場合、共同担保に入れた不動産すべてが競売にかけられてしまうおそれがあるのです。
この記事では共同担保の概要とリスクを解説し、共同担保を外す方法の一つである「任意売却」について紹介します。

共同担保とは?
共同担保とは、1つの債権の担保として複数の不動産(またはそのほかの資産)を設定することを指します。
通常、ローンなどの債権に対しては、1つの不動産が担保として設定されます。しかし債務者の信用力や担保物件の価値によっては、複数の不動産を担保とすることが求められる場合があります。これが共同担保です。
共同担保が設定されている場合、債権者は担保物件のいずれか、またはすべてを競売にかけることができます。複数の担保物件があることで債権者にとってはより確実に債権を回収できる可能性が高いという利点があるのです。
またそのために借りる側はより有利な条件で融資を受けやすくなるという利点も存在します。
複数の不動産を共同担保に設定した場合、それぞれの物件に個別に抵当権が設定されます。
共同担保が利用されるケース
共同担保が利用されるのは、主に融資を受ける側がより良い条件で融資を受けたい場合です。ただし債権者の側から、確実な債権回収やリスク分散のために共同担保が求められるケースもあります。
具体的には以下のようなケースで共同担保が用いられます。
担保価値が不足する場合
融資を受ける際に単独の不動産だけでは担保価値が不足する場合です。
住宅ローンを組むときに希望額に満たない場合や、事業資金を借りるときに会社所有の不動産だけでは融資額が足りない場合などの例が挙げられます。
より有利な融資条件を得たい場合
複数の不動産を担保に入れることで金融機関からの信用力を高め、より有利な融資条件を引き出したい場合です。例えば複数の不動産を共同担保に入れることで融資額を増やしたり、より低い金利で融資を受ける例があります。
複数の不動産を一括で活用したい場合
複数の不動産を担保に入れることで担保物件全体の価値を高め、より多くの融資を受けたい場合です。複数の不動産を担保として活用し、新たな融資を受ける場合に行われます。
共同担保のリスク
共同担保は債権者にとって利点が多く、それゆえ融資に関して有利な条件を得ることができます。しかし共同担保には様々なリスクが存在します。
複数の不動産を失うリスク
債務者の返済が不能になると、担保に入れた複数の不動産すべてが競売にかけられる可能性があります。複数の不動産を所有している場合でも、1つの債務のためにすべての不動産を失うリスクがあるため、注意が必要です。
不動産の活用制限
共同担保に設定された不動産はその後、自由に売却したり、担保に入れたりすることが制限されます。将来的に不動産を売却したり、追加で融資を受けたりする事が予想される場合は、共同担保の設定を慎重に検討する必要があります。
抵当権設定費用の負担
共同担保を設定する際には複数の不動産それぞれに抵当権を設定する必要があり、各々に費用(登録免許税、司法書士費用など)がかかります。そのため担保に入れる不動産の数が増えるほど費用負担も大きくなります。
共同担保解除の難しさ
一度共同担保に設定した不動産を解除することは容易ではありません。債務を完済するか、債権者の同意を得る必要があります。
追加担保契約
すでに提供している共同担保に加えて、追加の担保提供を求められることもあります。担保物件の価値が下落した場合や債務者の信用状況が悪化した場合などに発生しうるものです。この場合はどの不動産を担保とするか、物件の設定額について再度合意する必要があり、また新たに抵当権を設定するための費用がかかってしまいます。
このように共同担保契約には様々なリスクが挙げられ、契約内容を十分に理解せずに契約してしまうと後々トラブルになる可能性があります。
共同担保の外し方と任意売却
もちろん返済計画どおり債務を完済すれば、共同担保は自動的に解除されます。
しかしもし債務が残っている状態で共同担保を解除したい場合はどうすればよいのでしょうか。
共同担保の一部解除・担保物件の変更などといった手立てもありますが、そのなかでも一般的で活用しやすい方法と言われるのが「任意売却」です。
任意売却とは債権者(金融機関)の同意を得て、共同担保物件を売却する方法です。これによって得られた代金は返済に充てられ、残債がある場合は引き続き返済していく必要があります。
とくに任意売却では市場価格に近い価格で売却できる可能性が高いため、債権者から申し立てて行う競売よりも高価格で売却できる点で有効であるといえます。また一般に公開される競売とは異なり、不動産業者を介して行う任意売却は周囲に知られる可能性が低いという特徴もあります。
また任意売却には仲介手数料、登記費用、弁護士費用などの費用がかかりますので、これらについてもしっかり把握しておきましょう。
任意売却は不動産業者や弁護士などの専門家のサポートを受けながら進めることができます。さらに任意売却の手続きや債権者との交渉などを代行してくれる場合もありますので、その点も重視して相談先を選択するのが良いでしょう。
まとめ
共同担保は複数の不動産を担保として融資を受ける方法です。債権者にとっては債権を回収しやすくするという利点があり、そのためより良い条件で融資を受けたい場合に利用されます。しかし共同担保には1件の負債のために複数の不動産を失う可能性や、担保に入れた不動産の活用制限など、様々なリスクが存在します。
完済以外で共同担保を外す方法としては、「任意売却」が一般的な手段の一つです。
債権者の同意を得て任意売却することで、市場価格に近い額で売却し返済に充てることができます。
任意売却を検討する際は、不動産業者、弁護士、司法書士など、様々な専門家が関わってきます。複数の専門家に相談し、自分に合った進め方を選びましょう。