自己破産後に任意売却はできる?任意売却のタイミングを解説
本来、任意売却は自己破産の前に行うものです。
しかし、事情によっては自己破産後に任意売却を行うこともあります。
この記事では、自己破産後に任意売却ができるのか?という疑問にお答えしていきます。
また、なぜ任意売却を先に行うべきなのか、ということも解説します。
自己破産後に任意売却はできる?
自己破産をすると、すべての財産が処分されるため、基本的には任意売却を進めることが難しくなります。
しかし、状況によっては、自己破産後でも任意売却が可能な場合があります。
ここでは、自己破産後に任意売却ができるケースとできないケースをそれぞれ解説します。
自己破産後に任意売却ができるケース
自己破産後でも、裁判所や債権者の同意を得られた場合、任意売却が可能になることがあります。例えば、以下のようなケースが該当します。
・破産手続き中に任意売却の合意が成立している場合
破産手続の進行中に、債権者と任意売却の条件について合意が得られた場合、任意売却が許可されることがあります。この場合では、裁判所の認可を得た上で、任意売却が行われます。
・資産の価値が明らかに残っている場合
不動産の市場価値がまだ高く、競売にかけるよりも任意売却で高額で売却できる見込みがある場合、任意売却が許可されることがあります。債権者も債務回収の額が増えるため、任意売却に前向きな姿勢を示すことがあります。
自己破産後に任意売却ができないケース
一方、以下のような状況では、自己破産後に任意売却が難しくなることがあります。
・破産手続が終了した場合
自己破産手続きが完了し、財産が既に処分された後では、任意売却を行うことはできません。破産手続き終了後は、すべての財産が清算されたものとみなされるため、売却の手続きを進めることができなくなります。
・債権者が任意売却を拒否している場合
債権者が任意売却に同意しない場合も、自己破産後に任意売却を進めることはできません。例えば、競売による回収の方が債権者にとって有利だと判断された場合、任意売却を選択することは困難です。
任意売却と自己破産のタイミング
本来、任意売却と自己破産の手続きは、基本的に任意売却を先に行います。
任意売却を通じて不動産を市場で売却し、その売却益を債務の返済に充てます。
もし、不動産などの資産を持ったまま自己破産すると「管財事件」となり、破産管財人が資産の管理を行うため、任意売却の手続きが複雑になります。
また、裁判所に支払う予納金が必要になり、40万円程度が必要となるばかりか、免責までの期間も長く1年ほど必要です。
そのため、自己破産の手続きが進む前に任意売却を行うことが債権者と債務者の双方にとってメリットとなります。
ただし、状況によって最適な方法は異なるため、まずは専門家に相談することが大切です。
用語解説:管財事件とは
管財事件とは、自己破産手続きの一種で、破産者に一定の資産がある場合や、資産を隠している可能性があると判断された場合に行われる手続きです。
裁判所が選任した破産管財人が、破産者の資産を管理・処分し、債権者に対して公平に配分します。
また、債権者集会を開き、報告も行う必要があります。
自己破産前に任意売却するメリット
自己破産前に不動産を売却することには、いくつかのメリットがあります。
譲渡費用を経費に含められる
不動産売却には、仲介手数料や各種税金、抵当権抹消登記費用などの費用がかかります。
しかし、自己破産前に売却することで、これらを経費として計上できるので、実質的な負担を軽減できます。
競売よりも高く売れる
自己破産後には競売にかけられるリスクがあるため、相場価格よりも安く売却される可能性が高くなります。
しかし、自己破産前に任意売却を行えば、市場価格での売却が期待でき、より高い価格で取引できる可能性があります。
残債は残るものの、返済が可能であれば自己破産を回避できる可能性もあります。
持ち出しがない
自己破産申請には弁護士費用などの支出が必要ですが、自己破産前に不動産を売却することで、売却金からその費用を捻出できる可能性があります。また、債権者と交渉することで引っ越し費用の控除を認められる場合もあります。
任意売却、自己破産についてよくある疑問
任意売却は偏頗弁済(へんぱべんさい)に該当する?
偏頗弁済とは、支払能力がなくなることが明らかな状態で、特定の貸金業者だけに返済を行う行為を指します。
この行為は詐欺とみなされ、自己破産ができなくなってしまう可能性があります。
しかし、任意売却はこの偏頗弁済に該当しません。
住宅ローンの場合、抵当権が設定されているため、金融機関への返済が優先されても、偏頗弁済とは見なされないのです。
自己破産ですべての借金は免責される?
自己破産をすると、多くの借金が免責されますが、すべての債務が対象ではありません。
一般的な消費者ローンやクレジットカードの残高は免責されますが、税金や養育費、罰金などの公債権は免責されません。
固定資産税も公債権に分類されるため、自己破産後も納付義務があります。
ただし、納付金額は生活に配慮して、分割での納付など調整される場合が多いです。
まとめ
通常、任意売却は自己破産前に行われますが、特定の条件が満たされれば自己破産の申請中でも可能です。
たとえば、破産手続き中に債権者と任意売却に関する合意が成立した場合などが該当します。
しかし、自己破産手続きが終了した後や、債権者が任意売却を拒否する場合には、実施が難しくなるので、基本的には自己破産申請前に任意売却を行います。
任意売却を行うことで、経済状況が回復し自己破産を回避できるケースもあるので、可能な限り早めに金融機関、もしくは任意売却に特化する専門家に相談しましょう。