リースバックとリバースモーゲージの違い
リースバックとリバースモーゲージはどちらも自宅に住み続けながら資金調達を可能にする選択肢として注目されていますが、その仕組みは大きく異なります。所有権の移転、資金の受け取り方、そして将来設計への影響など、両者の違いを理解することは最適な選択をするために不可欠です。この記事ではリースバックとリバースモーゲージのそれぞれの特徴を比較し、どちらがどのようなケースに適しているのかを詳しく解説します。

リースバックとリバースモーゲージの違い
リースバックは自宅を売却し、売却代金を一括で受け取る仕組みです。売却後は買主(不動産業者など)と賃貸借契約を結び、家賃を支払って住み続けます。この方法では所有権が買主に移転するため、固定資産税の支払いが不要になるなどのメリットがありますが、将来的に住み続けるためには家賃を払い続ける必要があります。
一方リバースモーゲージは、自宅を担保にして金融機関から融資を受ける仕組みです。契約者は毎月の返済負担を軽減するために、利息のみを支払うことが多いです。そして契約者が亡くなった後に、担保にした自宅を売却するなどして一括返済を行います。リバースモーゲージでは所有権は移転しませんが、借り入れの担保に入れるため不動産の価値が変動するリスクや、相続人に手続きや手数料・税金などの負担がかかる可能性も考慮する必要があります。
リースバックとリバースモーゲージの利用条件
リースバックは自宅を売却し、売却代金を受け取ると同時に買主と賃貸契約を結び、家賃を支払うことで住み続ける仕組みです。そのため物件の条件としては、再販可能な物件であることが重視されます。また年齢制限は比較的厳しくなく、幅広い年齢層が利用できます。ただし賃料を支払える安定した収入が必要です。
リバースモーゲージは自宅を担保に金融機関から融資を受ける仕組みで、主に高齢者向けの資金調達手段です。そのため年齢制限が設けられており、55歳以上や60歳以上といった条件があるのが一般的です。また担保として評価の高い物件であることが求められます。資金の使い道に制限がある場合や、相続人全員の同意が必要になる場合もあります。
利用条件に関してとくに注意しておきたいポイントは以下の4つです。
・年齢制限:リースバックの年齢制限は比較的寛容ですが、リバースモーゲージは高齢者向けの制度であるため、年齢制限があります。
・所有権:リースバックは売却契約時に所有権が移転しますが、リバースモーゲージは契約後も移転しません。
・資金の使い道:リースバックは基本的に制限がありませんが、リバースモーゲージは資金の用途に制限が付く場合があります。
・相続人の同意:リースバックは原則不要ですが、リバースモーゲージは相続人の同意が必要となる場合があります。
リースバックのメリット、デメリット
リースバックのメリットは、まとまった資金調達、住み慣れた環境維持、維持管理費の削減です。売却金は生活費や医療費等に充てることができ、引越しの必要もありません。固定資産税等の負担も無くなります。
デメリットは、売却価格が市場価格より低くなりやすいこと、家賃の支払い、契約期間の制限、買い戻しが難しい場合がある点です。家賃は長期的な負担となり、契約によっては更新不可になってしまうおそれもあります。また買い戻し特約があっても、条件によっては買い戻すことができません。
リバースモーゲージのメリット、デメリット
リバースモーゲージのメリットは、家の所有権を変更せずに月々の返済負担を軽減し、住み慣れた家での生活を続けられる点です。存命の間は利息のみを支払うのが一般的であり、返済は契約者死亡後に自宅売却等で行われます。また住宅ローンからリバースモーゲージへの借り換えを利用することで毎月のローン返済額を軽減するという手立てもあります。
デメリットとしては、不動産価値の変動リスク、金利上昇リスク、契約者の長寿リスクが考えられます。不動産価値が下がると融資を受けられる額が減少し、金利上昇は長期的な利息の負担を増やします。さらに予想以上に長生きすると、利息が担保評価額を超えてしまう可能性も否定できません。また相続人がいる場合は将来的なトラブルを避けるため、不動産を相続できなくなることへの理解を得る必要があります。
リバースモーゲージの利用が検討されるパターン
老後の生活設計に対するニーズを抱える人々にとって、リバースモーゲージは有効な選択肢の一つです。
相続する相手がいない、または相続人が遠方に住んでおり不動産相続の予定がないといった場合は、とくにリバースモーゲージの利用が検討されます。将来的な売却を前提として、不動産相続の手続きや近年深刻化している空き家問題なども軽減しつつ、自宅を資産として有効活用することができます。また相続人全員がリバースモーゲージの利用に同意している場合も同様にスムーズな手続きが進むでしょう。
リバースモーゲージで得られた資金は、自宅に住み続けながら老後の資金に充てて生活不安を軽減したい、趣味や旅行・自己投資などに使いたい、自宅のリフォーム費用を捻出したい、など様々なニーズに合わせて活用できます。そのほか高齢者向け施設への入居資金を確保したい、生前贈与をしたいといった用途にも役立ちます。
まとめ
リースバックとリバースモーゲージは、どちらも自宅に住み続けながら資金調達を可能にする仕組みですが、所有権の移転や資金の受け取り方に大きな違いがあります。どちらを選ぶかは、資金の必要性、将来設計、相続への影響などを総合的に考慮する必要があります。まとまった資金がすぐに必要な場合や、自宅を所有する予定がない場合はリースバックが適しているかもしれません。一方で毎月の返済負担を抑えたい場合や、自宅を所有したまま住み続け、かつ将来的に自宅を売却したい場合はリバースモーゲージが適しているでしょう。
どちらの制度もメリット・デメリットを十分に理解し、自身のライフプランや家族の意向に合わせて慎重に選択することが重要です。必要であれば、不動産業者や金融機関、ライフプランナーなど専門家への相談も検討しましょう。